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チュウ太のウィーン日記


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2000年10月17日 火曜日

今日の授業は、つい黒板に大きく「嬉しい悲鳴」と書いて、その意味の説明から始めてしまいたくなるようなスタートだった。

意見文へのコメントの分担を決め、手紙を書き始める予定の日だったので、中学生の意見文をすべて印刷して用意していた。2人の学生からどうしても出られないと事前に届け出があったので、その学生には課題を渡し、残り6名分の教材を準備して教室に行くと、新しい学生がいる。あわててもう1人分コピーして戻るとまた1名、さらに2名と、結局新人5名が加わる大所帯になった。参加した学生からの口コミで履修者が増えるのは私にとってもチュウ太にとっても嬉しい限りだが、パソコンが3台しかないので、それだけがちょっと悩みの種。

「新人がこんなにいてはこの中学生の意見文を見たこともないだろうからどうしよう」と思っていたら、何とすごいことに新人のうちの1名は意見文を全部印刷して持ってきていた。また他の2名も話は聞いていたらしい。全員が読み終わってからにするとスケジュールが狂ってしまうので、少々強引だがあらかじめ役割分担を決めてしまうことにした。前回の参加者は、一通りは目を通してきた様子で、自分が手紙を書きたい相手を既に決めている。せっかくもらった意見文だから全員になんらかのコメントが行くように各人に役割を分担し、次のような形で手紙を書いてくるのを宿題にした。

  1. 自分がどんな人物か相手にわかるように自己紹介する
  2. 「私たちの夢・私たちの意見」全体についてコメントする
  3. 個々の相手の意見に対して自分の感想や意見を書く
  4. 日本の中学生たちに聞きたいことを質問する

手紙やメールのやりとりを続けるコツは、一方的に自分の意見を書くのではなく、相手が自分に興味を持ってくれるように自己紹介することと、必ず相手への問いかけをいれることだと説明しながら、短くていいから楽しい手紙を書くようにと呼びかけた。本当は直接担任の先生にメールさせる予定だったが、初めてのメールだし一度チェックしてほしいという学生の希望をいれ、来週チェックすることにした。(メール交換のルールづくりについては後述する)

新人達にもチュウ太をきちんと使わせたいので、最後の20分をそれにあてることにして、それまでの50分を意見文の読解にあてる。中学生達の書いた文章は中級程度の学生にとっても、読みやすいようだ。先に決めた役割分担に従って担当の生徒の文章をできるだけ書いた人の気持ちを込めて読むようにと指示し、生徒役と先生役とは読み手をかえた。かなり演技派の学生もいたりして、書いた人の存在を感じながら読むというのは通常の読解教材とはやはりひと味違うようだ。

パソコン室では新人を交替でパソコンの前に座らせ、経験者がそのアシスタントという形で教材バンクを開かせる。それぞれの学生がきちんと自分の担当することになった教材を開いているようだ。使い方の説明は経験者たちに任せることにして、私は各人がどんな単語をクリックするのか見て回った。すると、学生の中にはできるだけ辞書をひかずにいる、つまりクリックは最小限にしようとする学生が少なくない。文章理解のためにはそれもまた必要なことなのだが、チュウ太の場合、辞書引きはクリック一つですむわけだから、むしろどんどんクリックして繰り返し学習するところに意味がある。そこで、わかっていそうもないのに、調べようとしない学生にはいくつかの単語を指し示し、クリックさせ、さらに数回同じ単語をクリックさせた。こうしてから「list」ボタンを押せば、今クリックした単語がちゃんとリストになって出てくること、同じ単語を何回も押せばその回数も表示されること、さらにこのリストの単語が右の辞書とリンクしているからこれを使えば復習できることを示した。わかったかな?

こうした活動をしている最中に、毎回まじめに出席している学生から質問が飛び出した。「先生、これってとっても便利ですよね。自分が読みたい他の文章もこういう風にできないんですか?」待ちに待っていた質問だ。すぐにでもチュウ太の道具箱を開いて、使い方を説明したいのをぐっとこらえる。そして何気ない顔をして「ええ、じゃあ、来週ね」「ほんとですか。できるんですか」さあ、来週彼はそしてみんなはどんな顔をするだろう。

ただ考えてみると彼は決して日本語力が低い学生ではない。上級レベルに入れることができるくらいの能力は持っている。その彼が「道具箱」の存在に何故気づいていないのだろう。チュウ太のトップページから教材バンクに直行させたとはいえ、「チュウ太の道具箱」の文字や「辞書ツール」という言葉は見えるはずである。それなのに「道具箱って何ですか」とも聞かなければ、ちょっと触ってみようかなとも思わなかったらしい。いやそもそもこの文字の存在にさえ気がついていないのかもしれない。非漢字圏の学習者にとっては漢字情報のメッセージ性はそれだけ弱いとも言えるし、チュウ太のトップページにまだまだ改良の余地があると言うことかもしれない。これは今後の課題として心に留めておく必要がありそうだ。

☆一言メモ☆

チュウ太を授業で扱う限り学生は受け身だ。チュウ太の機能は一度に全部見せるのではなく、順に見せていくのが効果的だ。


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