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チュウ太のウィーン日記


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2000年10月24日 火曜日

今日の授業と言えば、何よりもまず、先週「自分が読みたい文章を教材バンクの中の教材のようにすることはできるか」と聞いたあの学生の話をしなければと思う。そう、チュウ太の辞書ツールを見せたときの彼の嬉しそうな笑顔は、ほんとにはるばるウィーンまできた価値があると思えるほどのものだった。

さて、今日の授業の予定は学生達に宿題にしていた手紙文を添削し、それぞれ学生が訂正を入れた上でこれをメールで土庄中学の岡先生に送ることだった。添削の間に学生達の漢字力をチェックしようと授業開始前に急いで漢字テストをコピーしていたら、学生の一人から「先生今日はコンピュータルームで授業ですよねえ」と声をかけられた。聞けばもうすでにパソコンの前にすわっている学生もいるとのこと。この熱心さにはすっかり嬉しくなってしまったが、よくよく聞けば、コンピュータルームがいつも使えるわけではないので、できるだけ授業は教室ではなくここでやってほしいと言う。自習室だから学生は自由に使えるものと思っていたが、パソコンを置いてあるので管理者(教師でなくてもいいし特定の利用時間には学生アルバイトが管理している)がいる時でないとこの部屋は使えない仕組みのようだ。事務局と交渉して、何とか授業のための予習復習にも使えるようにしてもらう必要がありそうだ。

今日は専門の特別授業がこの時間に重なってしまったとのことで欠席が多く、出席者は6名のみだったが、全員手紙を書いてきていた。(ただ、もしかしたら、手紙が書けなかったので欠席した学生がいたのかもしれない。これは来週確かめなくては。)ちょうど半数が手書き、半数がワープロで書いてきていたため、添削・修正の終わった学生から順にワープロで入力させることにした。作文の添削は、まずおかしい部分を下線で示す(つまり答えは示さない)ことにしている。どこがどのように間違ったかを自分で考える過程が重要である。修正ができなかった部分に関してのみ何故おかしいかを説明する。単純な文字や文法の誤りの半分は学生が自分で直せるものである。そこで、直してきた物をチェックしながら、こうしたケアレスミスをどこまで少なくできるかはトレーニング次第だと学生に伝える。作文の自己チェックの項目は数時間後に教えることにしよう。

ワープロ入力に関しては、ウィーン大学の学生は1年の時にまずローマ字で書かれた日本語教材に触れているため、ローマ字入力には抵抗がないようだ。放っておいてもどんどん自分で入力していく。また漢字の変換等で質問がでるだろうと思っていたのに、ワープロ関連では質問はでない。やや拍子抜けの感。だがこれがウィーン大学で日本語を2年間学んだ学生の一般のレベルだとは思えない。おそらく自由選択科目でも取ろうという意志があるくらいだから、学習者の中でもかなりできる学生なのだろう。本当は学習方法がわからなかったり、辞書が引けなかったりして困っている学生達にも教えたいのだが目下のところはそのルートがない。

さて、肝心の手紙はというと、どれもこれも、読んでいて嬉しくなるくらい心温まる手紙を書いてきた。しかもそれぞれが自らの経験を交えて書いているため、受け取った中学生もきっと喜んでくれると思う。中に1通だけ、相手の考え方がおかしいと一方的に指摘してしまっている手紙があった。これに関しては、表現を婉曲にすること、考え方のどこがどうしておかしいと思うのかをわかりやすく書き足すこと、それによって受け取った相手が拒否せずにあなたとの意見交換に応じてくれるのではと助言した。このあたりが生身の相手とのメール交換の難しさだと思う。よかれと思って書いた「私の夢」に対して突然批判的なメールが届いたら、相手の中学生は驚いてしまうだろう。果たしてこの助言だけでどこまで書き直してくれるか心配だったが、「かなり辛口のコメント」という程度には書き直してくれたのでほっとした。

書き上がった手紙はその場で岡先生にメールすることにした。学生達と相談して、万一相手に届かない場合のことも考え、私宛にもccで送ってもらうことにした。(その後、実際に、6名のうち1名のメールが送り先のアドレスを打ち間違えていて先方に届かなかったことが判明し、私の方から改めて転送した。)

一連の作業が終わった時点で全員をコンピュータの前に集め、チュウ太の道具箱を開けることにした。たった今入力したばかりの手紙文を「チュウ太の道具箱」のテキストボックスにコピーして、辞書ツールのボタンを押す。待つこと7,8秒。その間に先週の学生が「先生ひょっとして・・・」と言い出す。彼が最後まで言い終わらないうちに辞書ツールが結果を出してくれた。「わあ」というどよめき。そして「先生すごいですよ、これ。」という喜びの声。他人の書いた文章ではなく、自分たちが打ったばかりのまさにその文が、辞書引きの済んだ教材の形で出てくるというのは、さすがにインパクトがあったようだ。しかも辞書がどのくらいきちんと自分の使った言葉の説明をしているかにも関心が向く。「すごい」と言っていた学生は「勉強」の意味に「selling cheap, discount」があることに気づき「先生、こんな意味もあるんですか、知らなかった」と次々と単語の意味を調べはじめた。不思議なことにテキストボックスに直接入力させた場合にはこれほどの反応はない。打つ作業自体が大変だし時間がかかるので、辞書ツールの良さを半分隠してしまうのだろう。

そして来週は、送られてくる予定の今日の手紙への返事を、辞書ツールで読むという算段である。今頃、岡先生は学生達からのメールがどさっと届いてびっくりしていらっしゃるだろうな。明日にでも岡先生にメールして作戦会議を開かなくては。

☆一言メモ☆

自分たちで苦労して書いた文章を辞書ツールで分析させると学生達の目の輝きがちがう。


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