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チュウ太のウィーン日記


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2001年5月22日 火曜日

今日はまず、HPの相談からスタートすることにした。「タイトルを考えてきてくれた?」と聞くと、嬉しそうな笑顔。なるほど、にこにこするわけで、「『地球の歩き方』に載っていないウィーン情報」「ウィーンの秘密」「ウィーンのおすすめ」等の素敵なタイトルが次々と出てきた。「『ウィーンの秘密』ってちょっと怪しい感じだよね。」「でも、だからこそ見てみたいなと思うんじゃない?」「がっかりしたりして」とわいわい言いあっている。せっかく作るのだからできるだけ多くの人に見てもらいたいという気持ちが強いようだ。そこで「情報を探す人はどんなキーワードで探すと思う?」と横から一言、口を出してみた。すると「ウィーンでしょうね」「でもWienの人もいるんじゃない?」と、また大騒ぎ。そして、ついに「じゃ、いっそのこと『ウィーン・Wien・Vienna』と全部出しちゃったらいいんじゃないですか?」という究極のアイデアが出てきた。こうしてウィーン大学の学生達のHPのタイトルは「ウィーン・Wien・Vienna」と決まり、さらに全部ウィーンと読んでもらって「ウィーン、ウィーン、ウィーン」としたら面白い、とのことで、最後のViennaにも「ウィーン」とルビを振ることになった。しかも皆から出たタイトルのアイデアもそれぞれきちんと生かす方法も考えついた。ここで全部種明かしをしてしまうと実際のHPを見ていただく楽しみがなくなってしまうので、「見てのお楽しみ」ということにしておこう。

全体の構成についてもいろいろと意見が出た。

  1. 単純に各自のページへのリンクを並べただけではつまらない。
  2. 情報をいくつかのブロックに分ける必要がある。
  3. ウィーン大学からの情報発信である雰囲気を出すためにドイツ語でタイトルを出したい。
  4. その場合、ドイル語がわからない人も多いのだから日本語の説明も加える必要がある。

こうしたいろいろな意見を聞いているうちにC君の頭の中にはアイデアがひらめいたようだ。「ドイツ語の上にマウスを載せたら日本語が表示されるようにしたらどうですか?」「え?そんなことできるの?」「できます。」実は、このC君は前々回HPの作成の話を持ち出した時に「僕も自分のHPを作ろうとしたけど大変でやめました」と言った学生である。HP作成のノウハウをすでにかなり持っているようだ。できると聞いて「すごい、すごい。」と皆が大賛成。今度はC君が来週までにトップページの構成を考えてきてくれることになった。

これから以降の作業は完全に学生任せとなる。しかも、各人で原稿を作り、写真を撮影し、ページの構成を考えて、HTML化する等々、すべての作業は「宿題」ということになる。完成予定は6月26日。「あと1ヶ月しかない」と思ったほうがいいのか、「1ヶ月もある」と思っていいのか。学生達の嬉しそうな顔を見ていると安心していてよさそうなのだが、念のため予定表を黒板に書き(6月の5日は大学が休みなので)各自のHP原案の完成予定は6月12日ということにした。

さて、授業のほうは、今回から3回続きで「文体レベル」を扱う。実は、前回の「伝える」の意味を持つ漢字熟語の授業はこの「文体レベル」への導入として行ったものである。ホームページの完成期限と同様にこのクラスの授業もあと1ヶ月で終わりである。その後は日本語をクラスで学ぶ機会がない学生もいる。これまで習ったことの復習も兼ねて、くだけた話し言葉から改まった書き言葉に至るまでの言葉の使い分けをまとめようというねらいである。

「日本語の文章を読んでいて、難しい単語が出てきたとき、やさしい語に言い直しますね。例えば先週やった『伝達する』は『伝える』という意味でしたね。今度はその逆をやってみましょう。」とプリントを渡す。プリントにはあらかじめ話し言葉に近い表現に書き直した文章が書かれている。書き直す必要のある表現には下線が引いてある。さらにくだけた話し言葉にしか使わない表現には2重線を引いておいた。

文体レベルに応じた言葉の使い分けとしては2からー2までの5段階で示すのが便利である。各レベルは次のように区別している。
 レベル2 非常に改まった表現  論文や公式の挨拶文等に用いられる
    1 改まった表現     主に書き言葉で用いられる
    0 普通の表現      話し言葉でも書き言葉でも用いられる
   ー1 くだけた表現     主に話し言葉で用いられる
   ー2 非常にくだけた表現  親しい間でのくだけた会話に用いられる
全てのレベルの語彙がそろっている語はそう多くはないが、例えば逆接の接続詞の「しかし」や「けれども」等は一般に次のような使い分けがなされている。
 レベル2  しかしながら
    1  しかし
    0  でも・けれども
    ー1 けれど
    ー2 けど
このうち日本語学習者がまず必要となるのは「しかし」「でも」「けれど」の使い分けであろう。レベル2およびー2の語は理解できさえすればいい。

こうしたことをふまえた上で文体レベルの高い文への書き直しを行う。例えば、「言葉の違いだけじゃなくて、こんな文化の違いにも気をつける必要がある。」という文章では「言葉」「だけじゃなくて」「こんな」「違い」「気をつける」に下線が引かれ、さらに「じゃ」「こんな」には2重線が引かれている。そしてクラス全員で、この文は「言語の相違だけではなく、このような文化の相違にも配慮する必要がある。」と書き換えられ、さらに「だけではなく」は「のみならず」、「このような」は「こうした」にも書き換えうることを確認していく。その間に「じゃ」「こんな」はレベルー1で話し言葉にしか用いられないこと、テ型よりも連用中止型のほうが文体レベルが高くなること、文体レベルの高い文には漢字熟語が多用されること等の説明も加える。

ここで詳しく書く余裕はないが、この文体レベルの書き換え練習は日本でも上級や超級の日本語学習者を対象にした授業で実践してきた。読解の授業等では難しい表現をやさしい表現に直すことができると学習者も教師もその表現がわかったことにしてしまいがちである。だが実際は文体レベルが高いほど各語の意味範囲は限定されてくることが多い。そのあたりもこの書き換え練習で確認することができる。かなり高度な作業になるがそれだけに興味を持つ学習者も多い。用意した課題の前半部分の書き換え作業をクラス全員で行い、残り半分は宿題にした。

☆一言メモ☆
HPの作成は大枠を決めてしまえばあとは個々の学生に任せることになる。幸いウィーン大学のこのクラスでは、自分でHPを作成できる学生、さらに、できない友人を手助けしてくれる学生がいるのでうまくいきそうだが、自分でHPを立ち上げることができない学生が多い場合にはHP作成の講習を授業時間内に組み込む必要があるだろう。


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